●東南アジアからの便り⑧:ゼミ生のエッセイ「スラバヤで考えたこと:大切なことは何か」
東南アジアに留学中の学生からエッセイが届きました。普段は学術的な文章を書く練習をしますが、このエッセイは自分の感情や思いをもとに書かれています。ゼミでは稀なことですから、皆さん楽しんでください!
今回は4年生の吉田理湖さん、第3弾です。
「スラバヤで考えたこと:大切なことは何か」
人が人生で大切にしたいものは、人それぞれだと思う。スラバヤに来て、私は価値観の違いをたくさん経験した。
時間に関する価値観の違いもその一つだ。スラバヤに来てから、とても時がゆっくり流れているように感じる。例えば、学生たちはよく仲間で集まって語り合ったり、課題に取り組んだりしている。そのときは時間を気にするよりも、一緒に集まって時を過ごすことの方が優先されているように感じた。街の道端や露店には一緒にすわってくつろぐ人々の姿がよく見られる。互いに一緒にいること、何をせずともただそこにいること、そうした当たり前だが奇跡のような日常を、機械的に流れていく時間より大切にしているようだった。
また、宗教観の違いも当然ながら感じた。インドネシアでは宗教が人々の日常とアイデンティティの基礎と言えるほど大切にされていて(個人差はあるかもしれないが)、人々の生活の中に「神」の存在が感じられているようだった。ムスリムであれば一日5回の祈りを欠かさず行っていたり、中には毎週月曜日と木曜日の断食を家族で必ず行っている友人もいた。
スラバヤの人々の様々な価値観と出会い、私は自分の価値観についても振り返ることができた。そして、私にとって友人や家族、周りの人の存在がとても大切であることに気が付いた。大変だったこと、嬉しかったことなど、スラバヤでは想像以上に色々な経験があった。その一つ一つに友人、先生、家族があって、いくつもの人の想いに触れることが出来た。
そして、相手が優しくしてくれると、周りに優しさを返したくなった。相手が喜んでくれたら、私も嬉しかった。そして別れの時は友人が涙をながしてくれて、自然と涙があふれた。国も宗教も言葉も超えて、私はスラバヤの人たちと心の「つながり」を感じることができた。
私はこの人の間にある「つながり」が自分の人生にとってかけがえのないものだと思う。つながりがあるからこそ生きている実感が湧くし、つながりがあるからこそ助け合える。
この先の人生できっとつらいこともたくさんあると思う。その度にまず自分のことを考えてしまうかもしれない。でもそんな自分を少しずつでも強くしていきたい。周りと自分の間の「つながり」をもう一度思い出して、それまで以上に周りのひとのことを考え、優しくありたい。そんな風に心から思えるのは、間違いなく今まで関わって来てくれた全ての「ひと」のおかげだ。
「周りのひとたちのために何ができるか」という問いが、私の人生の道しるべになると思った。
「Terima kasih. ありがとう」を込めて一日一日を大切に生きていきたい。
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